(5)一発入魂!『芯入り割物の部』について ※過去5大会の成績表つき

どうも。「大曲の花火」を見に行くことが年中行事になっている筆者です。

皆さん、芯入り割物ってご存知でしょうか?

割物とは、丸く開く花火のことを言い、芯入り割物とは、日本固有の伝統的な花火で、同心円状に真円を描く菊型花火です。

写真は競技玉ではないのですが、大曲の花火で撮影したもので、色の境目が3つ見られるこの花火は、三重芯(みえしん)と表現されます。色が4つ見えて4重丸だけど、三重芯です。少々ややこしく感じますが、そういうもんだと覚えて下さい。玉名よりも1色多い花火です。

こうした”多重芯の花火”で美を競うのが『芯入り割物の部』です。昼花火よりは 何だかイメージが沸きますよね? どうでしょうか。

【芯入り割物とはどういう花火か】これから詳しく説明していきますが、手持ちの写真や動画がほとんどないので、どこそこのサイトを見てくださいとか、YouTubeの加藤煙火チャンネルで多重芯の回を見てくださいとか 丸投げしたい気持ちもありますが、頑張って書きますね。

(私は、花火大会中に写真や動画を撮り出したのはここ2、3年で、特に大曲の競技中は食い入る様に見ているので 手駒が少ないんです。。)

ですが、最後に戦績表を付けましたので 良かったら最後まで見てって下さい。

 

『芯入り割物の部』とは

■概要

競技は10号玉1発で競われます。10号玉イコール尺玉で、直径は約30cmです。大会の規定で三重芯以上と定められています。次回紹介する『自由玉』に対し『課題玉』とも呼ばれます。

芯入り割物は、整然と、同心円状に真ん丸に一斉に開き、一斉に消えるものが良いされています。その形状と咲き方の美しさが問われる競技です。(実際に良い例と悪い例を見比べてもらえれば、なるほどと納得してもらえると思うのですが。。)

割物を丸く開かせる為には、打ち上げられた玉がちょうど最高点に達したときに開くのが良く、上昇や下降中だと形がいびつになってしまいます。

また、花火の星が放射線状に均一にまっすぐ飛ぶのが良く、星が欠け落ちていたり、まっすぐ飛ばずフラフラと泳ぐのは美しさに劣り評価が下がってしまいます。 他には、発色の美しさや、一斉に色が変化して一斉にパッと消える心地よさも評価ポイントとなっています。(なお、一斉にパッと消えた花火は”消え口が良かった”と表現されます)

もちろん、安全性も評価の対象です。

 

そして、勝負は一瞬です。コンマ数秒の世界です。神経を集中していないと見逃してしまうため、桟敷席には独特の緊張感が漂います。

他の花火大会では味わえないこのヒリヒリ感が癖になり、全国各地からリピーターが集まってくると言って過言ではないでしょう。

一発入魂の力作を楽しめるのが『芯入り割物の部』です。

 

芯入り割物について

■芯入り割物の難しさ

多重芯の芯入り割物は、日本人の手先の器用さ、繊細さが産み出した芸術作品です。でも、30cmもの大きさなら4重丸の花火なんてそんなに難しくないんじゃないの? って素人は思うかも知れませんね。 かくいう筆者もその難しさを理解するまでは、崩れて開く花火を見ては「何でああなっちゃうかな?」とか思ってました。

写真は花火庵で撮影した”芯入り割物の断面模型”です※分かりやすく色付けされた物で、実際の花火は赤や黄色は付いておらず、真っ黒です。

この模型の場合、6重丸に見えるので五重芯と呼ばれる花火と思われるかも知れませんが、2重の芯の花火です。黒いのは割火薬(わりかやく)といい、爆発力で花火の星を中心から四方八方に飛ばすための火薬で、模型の黄色、緑、赤が”花火の星”です。

想像してみて下さい。三重芯(みえしん)は、この模型に更に”割火薬”と”花火の星”が押し込まれた状態で、四重芯(よえしん)だと更に2層増えた状態。五重芯(ごえしん、いつえしん)は更に2層増えた細かさです。

五重芯の場合、なんと12層ですよ!

手先が器用で凝り性な日本人らしい競技ですね。しかも、お金のためじゃなく自身のプライドで作っているところに花火師の情熱が感じられ、堪らないですね。リピーターはその熱をキャッチしているのです。 「割物の競技は地味でつまらない」という声をときどき耳にしますが、そういう人に届いて欲しいと思いながらこのブログを書いてます。

 

■進む多重芯化について

写真は「はなび ちか路」で撮影したものです。拝借させていただきました。

大曲の花火では、今や五重芯バトルの時代に突入してきました。2013年は28社中の2社だったのが、昨年は5社に増えました。その変遷は一番下に貼り付けたpdf資料で確認できますので、ぜひご覧ください。

五重芯は人の動体視力の限界にも挑む究極の花火です。フィギュアスケートでは難易度の高いジャンプに高い基礎点が設定されている様に、大曲の花火でも芯の数が多いほど高い基礎点が設定されている感じです。(公式な文面は無いと思います)

『芯入り割物の部』で崩れて開く玉が意外と多く見られる理由は、少しでも上位を狙う各社が難度の高い花火にトライしているからなのです。ガチンコであるが故、崩れた花火も出てくるわけです。

 

■八重芯(やえしん)についてのウンチク

最後に、筆者の好きなウンチクを紹介させて下さい。八重芯についてです。

「あれっ? さっき五重心が究極とか言ってたのに八重芯があるの?」と不可解に感じた方も居られるでしょうか。真面目に読んでくださって有難うございます。 そうです。八重芯という花火があるんですよ。

タネを明かせば簡単なお話しで、八重芯イコール2重芯です。芯が2つ入って、3重丸に見える花火です。8つの芯が入った花火ではありません。

なぜ二重芯ではなく八重芯と名付けられたのか。それは、1928年にその花火が開発された当時「これ以上のものは出来ないであろう究極の芯入り花火」と考えられ、数多く重なっている様子をあらわす”八重”という言葉が用いられた為という事なんです。

それが今や 花火職人の切磋琢磨により、6重丸に見せる”五重芯”の花火が登場し技術を競い合っているのですから、『花火の進化を表す分かり易い例』という事で、私が好きなウンチクでした。

 

 

↓成績一覧はこちら

成績一覧 10号芯入り割物の部 ※過去5大会分 玉名入り  

★ 芯の数の変遷(三重芯・四重芯・五重芯) 

 

 


ー次回予告ー

次回、インパクト勝負に胸おどる『自由玉の部』を紹介するの巻き

お楽しみ に

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA